私立探偵杉村三郎シリーズ第5作
とはいえ前作を読んでいなくても十分楽しめる。
3篇のエピソードがまとめられた短編集
「絶対零度」
結婚して二年ほどの娘が自殺未遂を起こして入院している。
ところが、一切面会させてくれない婿に手を焼いている婦人からの依頼。
真相を探る杉村は陰惨極まる犯罪にたどり着く。
「華燭」
湾岸のタワーホテルの結婚式に付き添いとして出席した杉村。
同じフロアで開催予定されていた2つの披露宴がほぼ同時に急遽開催が中止された。
「昨日がなければ明日もない」
超自己中心、金にふしだらなシングルマザーからの依頼を受けた杉村。
話を聞いてみると周囲の人間を次々にトラブルに巻き込む女性だった。
いずれの物語も自分なら決して関わりたくないような人物が登場、
読後に爽やかさは一切感じない。
しかし、世の中には自分が想像もつかないような鬼畜かのような犯罪を起こす人間が
一定数存在するのも事実。
そのような人間と関わらないように気をつけるしかないのだろうか?
世の中の暗部を宮部みゆきさんがさらりと表現。
あっという間に完読。
秀作。
・・一部抜粋・・
人は誰もが独人(ひとり)、時の川をボートを漕いで進んでいる。
だから未来は常に背後にあり、見えるのは過去ばかりだ。
川沿いの景色なら、遠ざかれば自然に視界から消えてゆく。
それでも消えないものは、目にみえているのではなく心に焼きついているのだ、と