昭和38年、オリンピックを翌年に控えあちこちで突貫工事中の東京が舞台。
礼文島から東京に出てきた空き巣常習犯の青年「宇野寛治」。
幼少の頃、義父に突き飛ばされるクルマへの当たり屋をさせられていた経験が心身及び脳に障害として残っていた。周囲の人から莫迦と呼ばれ子どもたちからもからかわれていた。そんな寛治が礼文島を抜け出して東京に出てきてからの物語。周辺で起きた連続空き巣事件と小学生男子誘拐身代金脅迫事件。子供の無事を願いながら懸命に犯人を追う刑事達の姿が当時の風景・日常とともに生き生きと臨場感逞しく描かれる。
昭和38年現実に起きた吉展ちゃん誘拐殺人事件をモチーフとしていて、社会背景描写がとてもリアル。
「砂の器」を連想させるような一冊。犯罪の動機にいささか疑問が残るところも似ている。しかし大作であることには違いない。読みやすい文章、物語に引き込まれ夢中になり一気に読了。昭和38年当時の世相、街角が色鮮やかな文章で表現されている。
奥田英朗さんの著作は初めて読んだ。別の本も読んでみたい。